ひろが語ると長くなる

本の感想書くために作ったはずのブログなのに割とながーく独り言呟いています。

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桜の木が見守るキャフェ/標野凪著【感想】

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喫茶ドードーや伝言猫シリーズで有名な標野凪さんの小説です。

キャフェチェリーブロッサムが舞台で、庭にあるヤマザクラが語り手です。
主人公は緋桜(ひお)という女性で、祖母は宿を、母が夫が料理をするレストランを経営し、緋桜に受け継がれたお店は季節の和菓子と茶を出すものとなり、名前もキャフェブロッサムになったそう。

表紙やタイトルのイメージとは違って和菓子が出てくる作品で、とても嬉しかったです。

最近ね、私自分がどうしたいのかちょっとモヤモヤとしていました。
そのせいで人と関わっていてもちょっとぎこちなくて。
大切な人が欲しいけど、でも進むことのできない自分もいると感じていて、そのため焦りもあるけどでも進めない自分もいて。
そんな自分だからこそ、この小説の優しさが身に沁みました。

自分のことは見えない

私たちは自分のことは見えません。
鏡や写真なので見ることはできても、他の人が見えているその通りに見えないこともあって、自分というのは自分では確認できないようになっています。
そして自分のことを理解するのも結構大変。
だからこそ誰かと関わっていく中で自分をも知っていくのだと思います。

主人公の緋桜をはじめ緋桜の両親、都子、可奈、奥野夫婦、添田親子、それぞれがそれぞれ悩んだり相手を想ったりして過ごしている。
でも想っているのと現実は違って。
伝えるのは緊張するけど、やっぱり言葉にしないと伝わらないんだなと思ったりもします。

「その試行錯誤っていうのが、相手のことを想うってことなんじゃないかな、って、最近はそう思えるようになったんです」
(168頁)

自信をなくしつつある緋桜に可奈が言ったセリフです。
自分がやっていることは果たして正しいのか、それでいいのかと思ったりすることもあると思うけど、試行錯誤して生きることは大切な人のためにもなるんだなぁと思うと勇気をもらえます。
癒しを終えた私だけど、やっぱり悩むことも上手くいかないこともあります。
その度に誰かの優しさでホッとしたり、進むことを選べたり。
人と関わることの有り難さを凄く感じます。

生きていくことはシンプル

現代は情報も多くて、人の生き方を知ることも多いです。
それが役に立つこともあるけど、自分の生き方に自信を無くしたり悩みになってしまうこともある。
時に道を間違えて上手くいかなくなることもある。

 人間だって同じだ。傷ついて、躓いても、自分の力で、あるいは誰かの手を借りてでもいい。ちゃんと立ち上がって歩いていけるはずだ。その力を、わたくしは信じて疑わない。
 削ぎ落とした後に残ったのは、生きていくことのシンプルさ。けれどもそれがどんなにも豊かなことか。
(211頁)

これはヤマザクラの語りの部分ですが、枝を切られてしまって終わってしまうと絶望していたヤマザクラが剪定されて元気になったところです。
ヤマザクラも自分のことをわかっていなくて微笑ましく感じちゃいました。
でもヤマザクラも不安になったり、余分なものを削いだら元気になれるのだと思うと、もっと軽々している人間である私ならもっと軽い気持ちで頑張れるかもと思ったりもします。

生きていくことはシンプルかなと最近思います。
どれだけ自分に正直でいられるか、大切な人と言葉を交わせるかなのかな、と。

それを大好きな和菓子が出てくるのも楽しみつつ、登場人物たちの関わりでじんわりと感じることが出る今作は、人と関わりたくなるしもっと自分を楽しみたいと思える小説なのでした。

自分を傷つけるのをやめる

桜は散るのが早い花です。
でも一度散ったら終わりでなく、また来年咲くための準備が始まります。
私たちも一緒。
でも桜のように「花を咲かせる」というシンプルな未来ではないから、悩むのかもしれません。
自分が叶えたいことと思っていることが、自分の本当の願いとずれてしまっていることも結構あるからです。
上手くいかない時は見ている未来が自分が望んでいるのかを感じて試行錯誤して変えていくことが大切ですが、そのヒントだけでなく、目指す未来へ進む力を与えてくれるのもまた人。
自分と向き合うこと、人と接していくこと恐れないことが大切だなぁと思います。

私の近くにヤマザクラはないけども、お天道様だって見守っているし、勿論ご先祖様もいる。
何より大切な家族もいるのだから、もう自分を傷つけることをやめよう、自信がない自分もできないことの多い自分もそのまま愛して生きていこうと、今作を読み改めて思ったのでした。

★この作品をお勧めしたい方は特にこんな人
・疲れていて癒しが欲しい
・和菓子が好き
・人の優しさを思い出したい
・凄く困っているわけじゃないけど、自分はこのままでいいのかな?とモヤモヤしている