ひろが語ると長くなる

本の感想書くために作ったはずのブログなのに割とながーく独り言呟いています。

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小説「8番出口」/川村元気著【感想・ネタバレあり】

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お題「我が家の本棚」

8番出口を読みました。

国宝を観に行った際に予告で見て気にはなるものの、私はホラーダメなので、小説版を読むことにしました。
公開から1ヶ月経ちましたが、ネタバレ含みますので、これから映画を見る方は当記事は読まないようご注意ください。
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では感想を書いていきます。

この作品はゲームがモデルとなっていて、登場人物もとてもシンプル。
迷う男、歩く男、ある女、少年が中心で、あとは女子高校生や、迷う男が8番出口に迷い込む前にいた電車や駅の登場人物くらい。

迷う男は電車で泣く幼い子を連れた母親が男に絡まれるのに遭遇するが、見て見ぬふりをする。
その電車内で元カノ(ある女)から連絡を受け、妊娠したことを告げられる。
迷う男は自分の人生には向き合っていない状態。
だから8番出口に迷い込んでしまったという設定なのだと思うけど、誰もがその可能性があると感じさせる設定で結構ゾッとする。

ご案内として出てくるのは

異変を見逃さないこと
異変を見つけたら、すぐに引き返すこと
異変が見つからなかったら、引き返さないこと
8番出口から外に出ること
(36頁)

異変を見つけたら戻る、異変がなければ進む、8番出口からのみ出ることというシンプルな設定ですね。
ただ異変がなくても異変に見えたり、8番出口でない偽の出口が出てきて、そこから出てしまえばゲームではゲームオーバー(0番出口に戻ることすらできない)ようで、映画ではこの8番出口の登場人物になってしまう設定は結構怖い。
異変を見逃してもやり直すチャンスはいくらでもあるけど、明らかに間違ってはいけないことをしたら一発ゲームオーバーというのは人生でもあることのように思えたり。
大体はやり直しチャンスはあるけど、呑まれてしまえば一発アウトを見逃せないという感じも結構リアルだと思う。

ゲームや映画だから「異変」という言葉だけど、人生に置き換えたら「違和感」の方がしっくりくる感じ。
そして「異変」は自分の不安や恐れからくるものだなぁという感じが伝わることが適宜出てきます。

いつも“いへん”をこわがっている。それが“いへん”なのか、そうではないのか。わからなくなって、こわくなって、まちがえたりする。
(105頁)

「異変は……この通路がお前に見せている罪だ」
(128頁)

私たちは生きていたら間違うこともあるし、間違いを恐れることだってある。
改心するまでぐるぐるというのは確かに異変を通して自分とも向き合うことなので、罪と言われると確かにそうなのかもしれないなぁと思うけど、思うと気が重くなったり。

でも

どの順番でなにが起きるのか、もはやわからないし、すべてが並行世界の出来事なのかもしれない。だがきっと、それらはすべて関係している。望むべき人生は、進むべきか戻るべきか、悩み苦しんだ末の選択の積み重ねの先にしかない。
(161頁)

ということで、自分の人生って自分でちゃんと選択しないといけないというのを実感させられる作品でもあるし、

【8番出口】から出ることができたら、僕は怠惰な現実のループから抜け出したい。そこから出なくてはならない。そのために、僕は選択をしなくてはいけない。前に進むのか、それとも引き返すのか。
(163頁)

迷う男は自分の人生から逃げてきたのをやめることを決意し、今作は最初の電車のシーンへ戻って、迷う男が親子を助けようとするシーンで終わるところが含みがあると感じる。
選択が変わった世界で迷う男はどう生きていくのかは今作では描かれないので、続きがあるのか、続きは想像させるのか、という感じ。
(電車もののシリーズもあるらしいので、次回作があるのかな?)

異変は自分にとって衝撃だったものが結構出てくるので、津波シーンは色々言われたけど、この作品にどうしても入れたかったんだろうなと思う。
赤ん坊の鳴き声は迷う男に対するエピソードだけど、少年が見たスマホのニュースのネズミの実験のエピソードまで異変に出てくるので、自分に実際に起きた出来事だけでなく印象に残っているものの影響も出ることも示唆しているように感じて、だから「何を見るか、どんな生き方を選ぶかは大事」だなぁと思う。

嫌なものから逃げても世界は変わらない。
でも向き合って選択を変えると変わるのかもと思えたので、自分で選べる強さを感じられた作品でもある。

おじさん(歩く男)側のエピソードが入ってくるのでこの8番出口内のパラレルワールドみが深まる感じ。
映画では歩く男は河内大和さんが演じるが、凄い人選だなぁと感じたくらい歩く男のインパクトがある。
小説読もうかと思ったのは、歩く男が気になったからというのも大きいので。
迷う男が最後に遭遇する異変は歩く男だったけど、最後に歩く男が見た景色を知ってから、夢を見るのではなく現実を選ぶシーンが凄く良かった。

あと映画ではボレロもちゃんと流れるみたいだけど、ボレロってフィギュアスケートでも定番の曲ですが、ずーっと同じ調子で進む淡々とした曲だし、6拍子なのであまり聴き慣れなくて違和感もあるし、でも終わりに向けて盛り上がるし、ほんと不思議な曲だよね。
あのずっとループしそうな感じ、気づいたら盛り上がってきているという異変、いい曲なのに何となくゾワッとするので絶妙だなぁ。

今年の秋は、自分で意図してから行動をすることが大切というのも星で出ている。
hiro-pianotree.hatenadiary.com
そんなタイミングで読むことができて良かった。

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