大好きな「コクと深みの名推理」シリーズの18作目です。
※過去シリーズの話も含め、ネタバレありの為、ご注意ください。
↓もくじ↓
個性豊かなキャラクターたちと美味しそうな料理
コクと深みの名シリーズというと、クレオ・コイル(夫婦合作のペンネーム)が書くミステリーで、
NYマンハッタン(シリーズによってはワシントンDC)のコーヒーショップビレッジブレンドを主体として話が進みます。
主人公はビレッジブレンドのマネージャー、クレア・コージー。
クレアだけでなく恋人で刑事のマイク、元夫のマテオ、マテオの母でビレッジブレンドの経営者マダム、
娘のジョイ、ビレッジブレンドで働くタッカーやエスターを始めとした魅力的なキャラクターと美味しそうな料理が魅力的。
巻末にレシピも載ってるのだけど、日本だと手に入れにくそうだったり高そうなものだったりで、なかなか挑戦できません。
誰か作ってー
コーヒーも絶対美味しいだろうし、スタッフも素敵となると、近くにあったら常連になるなぁと思えるお店。
登場人物がウインクしちゃうところが外国作品ぽいんだよね。
(日本のカフェも気さくでチャーミングな店員さん多いけどね)
記憶喪失
いつも事件に巻き込まれるクレアですが、今作では事件に巻き込まれた際記憶喪失となります。
しかも、マイクにプロポーズされて二ヶ月後に、15年分の記憶を失ってしまいました。
15年分の記憶を失ったということは、シリーズ作品で語られる話がごっそり抜け落ちているということ。
愛娘ジョイの成長、大切なお店と愛すべきスタッフとの記憶だけでなく、
最愛の人、マイクまでも分からなくなっています。
元夫のマテオと別れた時の記憶はある為、マテオに嫌悪感を抱いています。
今作はクレアが記憶を徐々に取り戻すこともあり、マテオとの結婚の経緯なども語られます。
元夫vs婚約者
今作の象徴的な場面は、クレアをめぐり元夫と婚約者が対峙する場面。
それぞれの対応が自分の気持ちを優先しているのか、相手を尊重しているのかがよく分かります。
でも人間どっちにもなり得るとは思うけど。
元夫マテオ
マテオは今作でクレアと別れた後の後悔を語ります。
シリーズでもそんな雰囲気が出ていたこともあったように思いますが、
出来ることならやり直したいという気持ちが過去最高です。
まぁ今止めないとマイクと結婚してしまうわけだし、もしかして自分以外の人のものになるのが嫌だったのかな?
だからマイクを思い出そうとしていたり、マイクとの距離が近づくと不機嫌になります。
「それはちがう!きみとジョイのことは愛していたし、それはなにも変わっていない。ただ、夫として、父親として期待を背負わされることが重かった。自由になって、ほっとしたんだ」
(中略)
「わかっている。いまはわかっている。聞いてくれ。とにかく、黙って聞いてくれないか?自分が大変な過ちを犯したと、すぐに気づいたよ。帰ってもきみとジョイはいない。コーヒー豆を調達するための出張から帰るたびに喪失感が強くなった。さびしさも。パーティーや旅なんかでは絶対に癒せないさびしさだ……」
(中略)
マテオ・アレグロはいいところがたくさんある、すてきな男性だ。ただ、結婚には向いていない。
(237〜238頁)
別れた後に大切さに気づくってやつですね。
女性関係の派手なマテオですらこうやって思うものなんですね。
勿論クレアが魅力的というのもあるのだろうけど、
自由になりたかった原因となったであろう経緯を今作母親であるマダムがマイクに語るので、
マテオがプレッシャーを感じた経緯も読者は分かります。
まぁそれならね、ちゃんとしろよって話なんだけどね。
可能なら、マイクのことは忘れ、もう一度自分と。
そういう姿勢が見て取れた時は流石にマテオが嫌いになりそうでした。
でも二人がまた親しくなっていく様子を見てきちんと身を引くのがマテオらしくてホッとしたけど。
婚約者マイク
マイクは、最愛の人が自分のことを今日初めて会った人と思って接してきても
それでもクレアのことを思い一気に距離を縮めないようにしたり、
触れるのすら我慢したり、凄い愛だなと思いました。
あんな状態でよく理性保ったなぁと思うような場面もあったし。
シリーズ通してゆっくり愛を育んできた二人の愛情が壊れなくて本当に良かった。
お互いがお互いのことを理解し、尊重し、必要としている。
すごく素敵な関係だと思う。
人は一人では生きていけない
今回の作品で気になった言葉は
光のなかをひとりで歩むよりも、闇のなかを友と歩くほうがいい。
(116頁)
光のなかを友と歩めるのが一番いいけど、
辛かったり大変な時でも一緒に進める仲間がいるのは本当に心強いもの。
楽しい時間を共有できる関係性も勿論大事だけど、辛い時に支え合える人がいるならば大切にしたいなぁと、人と気軽に会えない世の中になった今だからこそ思います。
まだシリーズ続いてると思うので、続きはまた来年。
また来年クレアたちに会える楽しみを持って、日々大切に過ごそうと思います。
因みにシリーズ15作目の大統領令嬢のコーヒーブレイクではオープンマイクなどの話も出てきます。
シリーズものなので1から読めた方がキャラクターの関係性が分かりやすいとはいえ、
途中から読んでも物語としては楽しめますよ。
(途中で出版社が変わったからか、最初の方の作品はもう中古でしか手に入らないかも。)
皆様もコーヒーのお供にぜひ!