ひろが語ると長くなる

本の感想書くために作ったはずのブログなのに割とながーく独り言呟いています。

広告

映画「国宝」【感想/ネタバレあり】

広告

先日国宝を観てきました。
吉田修一さんの同名小説を元とした李相日監督の作品です。
公開後話題になっていましたが、私の知り合いも観る人観る人良かったと言ってたので、久々に映画館へ観にいきました。

作品のネタバレ含みますので、これから観る予定の方はご注意ください。
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭
🪭

俳優さんは凄い

当映画はやっぱり歌舞伎のシーンが見どころです。
映画の作りが喜久雄の人生に焦点を当てている形なので、歌舞伎のシーンも惜しげもなく出てきます。
主演の吉沢さんは1年半、横浜さんも1年稽古をしたそうで、歌舞伎のシーンは兎に角圧巻でした。
皆さんスケジュール詰まってると思うのに、よくここまで準備して映画に挑んだなぁと思うくらいのレベルでした。
しかも衣装めちゃめちゃ重いのによく踊れるなぁと驚きます。
歌舞伎の演目中にBGMが入ってしまうと流し見になってしまう感覚となるけども、どの演目も素晴らしかったです。
ポスターになった部分が映画のシーンで出てきますが「あ、このシーンだから二人とも良い表情してるんだなぁ」というのがよくわかりました。

喜久雄の少年時代の黒川くんも素晴らしくて、成長すると吉沢さん演じる喜久雄になるなぁという説得力が物凄くあった演技でした。
越山くんも俊ぼんの優しさ甘さがよくでてましたね。
そして渡辺謙さんも素晴らしかったけど、万菊を演じる田中泯さんは最初歌舞伎役者なのかと思ったくらい、上手く、恐ろしく、美しかったです。

歌舞伎界の説得力は寺島しのぶさんと中村鴈治郎さんだったと思います。
お二人が色んな形で作品と関わることでリアリティを出し、でも歌舞伎の演じ手が俳優さんということで歌舞伎の演目のみに注目を集めることもできたのかも、と思います。
映画では兎に角歌舞伎の素晴らしさと血筋の強さに焦点を当てたかったのかなと感じました。

歌舞伎の世界は血筋が強い

私は歌舞伎は一度だけ、十八代目中村勘三郎さんの襲名披露公演を観に行ったことがあります。
その時連獅子も観ましたし、中村七之助さんの代役だった市川海老蔵さん(現住十三代目市川團十郎さん)も観ました。
2階席でしたが音声ガイダンスもあったため、演目の内容を知りながら観ることができて楽しむことができました。

歌舞伎は血筋が大事な世界のようです。
成田屋の市川團十郎が絶対的トップですが、それ以外の場でも部屋子や養子となった才能のある人はなかなか出世できないような印象と素人の私には感じます。
芸の才能よりも血筋が強いというかね。

今作の主役である喜久雄も部屋子ということで、歌舞伎界の血筋はないんです。
生まれ持った才能は素晴らしいのですが、血筋の俊ぼんは才能が喜久雄よりは劣るもののやっぱり血筋の優遇だなと感じる場面も多いです。
渡辺謙さん演じる二代目半ニ郎(のちの白虎)は二人を切磋琢磨させて俊ぼんを伸ばしたい考えだったと思うし、喜久雄の才能も信頼していたけど、結果的に俊ぼんは一度潰れかけて春江と共に駆け落ちすることとなってしまい、死に目にも会えないことに。
白虎が亡くなる前のシーンで俊ぼんのことを呼ぶのは喜久雄としてもかなり辛いだろうなと思いましたが、映画ではそのまま舞台を続けるところが役者魂でしたね。
三代目半ニ郎を襲名したばかりの喜久雄は白虎が亡くなった後後ろ盾も無くなってしまったため、良い役がもらえなくなってしまい、一時は相当苦労しました。
それでも俊ぼんが戻ってきてくれたお陰で戻れたものの、その後もきっと大変なことがあったのではと思います。
俊ぼんも早くに亡くなってしまうし。
糖尿病なのは俊ぼん遊びすぎてたとはいえ血もありそうで、それもまた血に翻弄されたなぁと。

万菊さんも血筋がなく、芸だけで上がった人なのかなと感じました。
喜久雄をずっと気にかけ、気にしていたように見えたので。
最後静かに亡くなるシーンは芸を極めて人間国宝まで上がった人でもずっと心の奥にあった虚しさは変わらないのだろうなと伝わり、なかなか辛かったですね。

二人の友情

何も情報のないまま見にいったので、私はそのうち俊坊が喜久雄をいじめたり酷いことをするのかな?とも想像していたけど、そんなことはなく。
むしろ代役公演の際に楽屋に来て、震えの止まらない喜久雄に化粧をしてあげたり「お前の血を飲みたい(血筋が欲しい)」という言葉を受け入れてくれる優しさがありましたね。
切磋琢磨して成長し、東半コンビ、半半コンビとして演じるのは二人だったからこそできたと思います。
二人とも歌舞伎が好きで、根はずっとまっすぐなんだなと思います。
俊ぼんがいなくなったことや亡くなったことは、俊ぼんが戻ってきて平然と舞台に立つことより喜久雄にとって辛かったろうな。
吉沢さん、横浜さん、渡辺さんの3人のインタビュー動画だと「2人はシーソーみたい」という話が出てたけど、2人だからシーソーでもバランスが取れるのだろうなという感じでしたし、片方が欠けてしまうと落ちっぱなしになりかねないのも怖いなと思いました。

映画のポスターなどの印象や、二人での演目が結構時間を割いていたためダブル主演なのかと思っていましたが、原作同様喜久雄が主人公なのは納得でした。
美形設定の喜久雄なので、容姿と演技力が揃う吉沢さんありきの映画だったと思いますが、俊ぼんが横浜さんで良かったです。
女形の化粧が似合い歌舞伎役者っぽいのもそうですが、吉沢さんと並んでも引けを取らないところや、ぼんぼんの雰囲気もちょっと弱っているところの色気もピッタリでした。
何より二人で歌舞伎を演じるシーンはお二人だからこそあのシンクロ具合になったと思いますし、二人で演じる曽根崎心中の演目も迫力が出たと思います。

どさ回り時にのジョーカーのような怖さの中に、儚さと美しさも存在

彰子と駆け落ちになってしまった後はどさ回りして仕事をしていた喜久雄だけど、女形の喜久雄を見たお客の男性一人が自分に気があると思い込み、仲間を連れて喜久雄に会いに来るシーンも犯罪的な感じの怖さがあった。
本当の女性だったら別の意味で危なかったと思うから。
男性だったから生きてはいたけど、あの屋上で何かを見ながら(恐らくいつも出てくる見てみたい景色だと思う)舞っているシーンはジョーカーのように見えるくらい怖く、でも美しくもあり、色々怖かったです。
ここで死んでしまうのかと思うくらい儚くもあり、狂気もあり、その時にしか出ない喜久雄の舞のように感じました。
これも悪魔と契約した対価なのかな。

原作では彰子とのことが認められるそうではあるけど、映画ではここで彰子とお別れでしたね。
悪魔に魂を売り、歌舞伎以外は何もいらないということが強調されたシーンでもあったと思います。

喜久雄以外の心情は小説での補完が必要

どの役者さんも演技が上手なので演技で興醒めしてしまうところはなかったのですが、どうしても原作が長めの作りだからそれを3時間に詰め込むとしたら端折られるシーンがあるのはしょうがないかなと思います。
でも原作を読んでいないと初見の際は「あれ、これはいつからなの?」とかそういう印象を受けるシーンもちょいちょいありました。
後々ゆっくり振り返ってみると解釈できるシーンばかりでしたが。

春江や綾乃、彰子、マツなど、女性に関してはあまり深く掘り下げられないのだけど、これも歌舞伎の世界が男性の世界であるからだと思います。
原作では掘り下げられているようなので、読んでみようと思ったのは女性らの心境も見てみたくなったからというのも大きいですね。

春江は映画だと若干は俊坊との関係性が見え隠れしているかも?くらいだったりするけど、駆け落ちのシーンはやや突発的には見えました。
でも喜久雄の才能と歌舞伎への想いに対して打ちのめされたり自分の方を向いてくれないという両者の敗北感が結びつけた縁のように見えるようにはなっていて、喜久雄の才能と悪魔へ魂を売った感じがより伝わってくるシーンでもありました。
曽根崎心中とリンクさせるなんて凄いけど、春江も俊ぼんもそのくらいの心境になってしまったのでしょうね。
でも春江がいなかったら俊ぼんはこの時命を落としてしまった可能性もあるかもなので、春江がいてよかったと思うし、春江も振り向いてくれることのない喜久雄を思い続けるよりも近くで支えられると感じた俊ぼんを選んでしまったのでしょうね。

綾乃は映画を見ると唐突に自分の父である喜久雄を許すようにしか見えないのだけど、血に翻弄された喜久雄が唯一血の繋がる綾乃に認められるシーンは必要だったのかなと思いました。
血に翻弄される喜久雄が人間国宝になったこと以外でようやく報われたというかね。
瀧内公美さんだと気づいたのは映画を観た後でした。

宮沢エマさん演じる立花マツに関してはあまり映画では触れられていないのですが、喜久雄のセリフから継母とわかります。
それを聞くまで美しい喜久雄の説得力があるような容姿で、宮沢さんの起用がピッタリだなと思ったくらいです。
立花権五郎役の永瀬正敏さんの迫力も凄く印象に残りましたし、冒頭のシーンは結構迫力あって怖いです。
血液恐怖症が克服できてなかったら映画どころじゃなかったかもと思っています。

ただ、映画では最後まで喜久雄を見守る印象を持つ竹野が原作を読むとあのスキャンダル記事の張本人、とネットで見て驚くくらいです。
そのことから考えてみても、映画では人の闇みたいなのは若干和らいだ表現かなと思います。
時代背景的にネットがないだけあって喜久雄のスキャンダルはそのうち忘れられるというのもそうだけど、春江のことも触れられない時代だったのはある意味平和かもしれないとも思いました。
今ならむしろ春江が色んな意味で叩かれかねない気がするので。
ただネットがないことにより喜久雄が俊ぼんの席を奪ったようにしか見えないような印象を作られてしまったのが辛いところでしたが。
ネットも良し悪しですね。

人間国宝となった喜久雄が鷺娘の最後に追い求めていたシーンを観る場面で終わるけど、あの場面は冒頭で喜久雄の父である立花権五郎がやられるシーンにリンクするので、喜久雄の死も近いのかななんて思わせる終わり方でした。

映画を観ている時は暴力的なシーンも濡れ場も必要なん?と思っていましたが、振り返るととても大切なシーンだったと思います。
彰子との濡れ場は喜久雄が全く愛がなさそうなのだけでなく、悪魔との契約で歌舞伎のためなら、血のためならなんでもする感じも伝わりました。
ただPG12の割には小学生のお子さんと観るのはきついと思うシーンでしたので、その辺りはご注意くださいね。

ただ没入して見た方が楽しめる作品ですし、綺麗な大画面で観る歌舞伎は迫力ありますから、劇場で観るのがオススメな作品ではあります!

あと歌舞伎はいい席は高いしとれないと思うので、シネマ歌舞伎は見たいなぁと感じました。
当作品に合わせてなのか、今は京鹿子娘二人道成寺や鷺娘もやっているみたいですね!

原作も読んでみる

ということで、原作小説を買いました。
ananはたまたま吉沢さんと横浜さんの表紙のタイミングで占い特集だったので、勉強のために買いました。
私も好きなことはとことんなタイプだな。笑

小説読んだらまた観たくなってしまう気がする。

ちなみに私は飲み物買わずに映画見に行って、涼しい場所で熱中症になりかけたようなので(頭痛と火照りがなかなかおさまらなかった)皆様もご注意くださいね。
トイレ行くたくなるのは嫌だけど、それでも時々水分口に入れないとダメだな。
でも飲む余裕がないくらい没入してしまう映画ではありましたね。

没入してその世界を楽しめる映画で、とても素晴らしかったです!
定価の2,000円でも充分安いと感じるレベルです。
皆様も是非!

映画国宝公式サイト

kokuhou-movie.com