ひろが語ると長くなる

本の感想書くために作ったはずのブログなのに割とながーく独り言呟いています。ストピや演奏の解説も当ブログで行ってます。

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祝祭と予感

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映画も絶賛公開中、書店でも特集を組まれるくらい大人気な「蜜蜂と遠雷」のスピンオフです。
今回もお気に入りの演奏*1を聴きながら。
ネット通販だと入荷待ちだったり品切れてたり凄く人気なので楽しみにしていました。

…でもやや毒ありの文章ですので「祝祭と予感」に肯定的な意見をお持ちの方は読まない方がいいと思います。


●目次●

えっ、これだけ?ここで終わるの?

スピンオフのため、本編の登場人物の伏線回収が主。
本編の後のものもあれば、過去の話も有。
6つの短編からなるためそれほど沢山の情報が出てくるわけではない。
寧ろ186頁しかなくて少ない。
えっ、ここで終わる?って思う。その後は想像させる、というレベルじゃない。
物足りない。もっと読みたい。読ませて。
この分量をハードカバーで出す意味は?
文章スカスカに見えますけど?
私は余白の多い本は望んでいないのだ!

巻末の初出一覧見ると何らかの理由で急ピッチで仕上げることになってしまったのかなぁなんて思ったりね。
もっとゆっくり丁寧に作ることが許されていたのなら、もっと読了感あったかもしれないと思うと凄く残念。
作品作るって時間必要だからね。

明石がいない

…ところで、明石は?明石は今どこで何してるのさ?
帯に「また彼らに、会える。」って書いてあるのよ?明石いないじゃん。
Amazonにも同じような感想書いていた人いたし、明石や松坂桃李君ファンは手に取ってガッカリしたと思うよ。
まぁ本編でも若干扱いが悪いというか、主役級3人+サブ1人(というか天才3人+凡人的な扱い)っぽいところあったもんね。
でも明石がいないと作品がしまらない雰囲気はあったので、本編のコンテスタントとして明石の立ち位置は凄く大事だったのだけど。

映画の出演に出てくる順番は松坂君が2番目なのでそこそこ良い扱いなのかな?
それならまだバランス取れてるけど、本編とは遠のく気もする。難しいな。

それぞれの作品について

既に言いたい放題ですが、本編で描かれなかった登場人物の背景がわかるスピンオフの発売は嬉しいんです。
この人がどんな考えでどんな想いでピアノに向かっているのか、それを知ることが出来るのは凄く面白い。
私もピアノ弾くし、ストリートピアノやSNSを通じて色んな人と出会うから、そういう感覚に近い。

祝祭と掃苔

スピンオフの序章と本編の伏線を回収していきますよーって感じ。

獅子と芍薬

三枝子とナサニエルの若い頃の話で、一番面白かったかな。
(一番ページ数も多いし丁寧に描かれている印象)
人との縁って不思議だなぁと思う。意外な形でつながっていくことは多々ある。
亜夜とマサルが二人のような複雑な関係にならないといいなぁ…どうかハッピーエンドでと思ってしまう反面、意外とくっつかなかったりしてね。余計なお世話だね。

袈裟と鞦韆

作曲ってこうやって生まれるんだなーと思いつつ、本編にも出てくる「春と修羅」の解釈で明石が賞をとったのが納得できる話だった。
そう考えるとある意味明石にも関係するスピンオフなのかな。

竪琴と葦笛

マサルナサニエルのところにいる理由、様々な楽器をやっている理由がわかる話。
天才をコントロールしたがるというか、天才を利用してのし上がろうという輩はどこにでもいるので、マサルが上手く交わしてくれて良かったと思う。
何をして生きていくにも地頭の良さは大事。お前が言うなとつっこみがきそうだけど。

鈴蘭と階段

亜夜と塵がきゃっきゃしていて可愛い。
「鈴蘭と階段」の続きというスタンスで奏メインのスピンオフが1冊あっても面白いのになぁと思う。
ピアノと違い、自分の楽器と呼べるものがあるのは凄く羨ましい反面、選ぶの大変なんだろうね。
ストリートピアノや貸しスタジオでもしっくりくるピアノとそうでないピアノってあるから、そういう感覚なのかな。
ざっくり言うと、合わせてくれるピアノと合わせにいかなきゃいけないピアノってあるよね。
合わせてくれるピアノは楽しくなってテンションが上がりすぎて、合わせにいかなきゃいけないピアノは凄く冷静な演奏になる。

伝説と予感

この作品に関しては、唯一このページ数が少ないと感じてしまう分量で丁度良いと思う。
塵(ジン)とホフマンの出会いの瞬間、一瞬で感じ取れるあの感覚に長文はいらないと思うから。
私はやっぱり塵が好きだ。才能と癒しを求めているのかも。

タイトルの付け方

本編タイトルもそうですが、スピンオフの個々の作品のタイトルも含めて「●●と××」というパターンにしているんですね。
タイトルの付け方は凄く好みです。
スッキリしているだけでなく、それぞれの作品を読み終わった後に「あ、こういう理由でタイトルにしたんだ」って納得出来る上手さがある。
私はタイトルや見出しを付けるのが苦手なので、こういう才能は羨ましい。

場の空気を支配する

都庁にストリートピアノが設置されて半年以上経って、あちらこちらにストリートピアノが設置されるようになりました。
Love Piano Yamahaの品川ピアノ復活*2もあり、ストリートピアノの利用に関しても様々な意見が出るようになりました。
それを読む度に皆が色んな想いを抱えてストリートピアノを弾きに来ているのがよくわかる。
だからこそそれぞれの主義や嗜好が相容れない時だって出てくるんです。
特に、日本はまだだストリートピアノに対して弾くのも聴くのも特別感があるから。
日常ではないんですよね。

ただ弾きに来た人、聴いてもらいたい・喜んでもらいたい人、楽しい時間を過ごしたい人、注目されたい人、聴くのが楽しい人、たまたま通りかかって「なんだこれー」って思う人、五月蠅い・邪魔だと思う人…様々だと思うんです。
コンクールですらレベル差が出るので、ストリートピアノでもレベル差が当然あります。私も上手ではない部類です。
でもどんなレベルの人であれ、場の空気を変えて一体感を作ってしまう人がいるのは事実です。

私の先生は空気を変えてしまう…支配してしまうに近いかな…凄い演奏をする人。
演奏会で心地いい演奏で寝てしまった人たちを起こしてしまう。
そもそも寝かしてくれない。ステージに出てきた段階で目が話せなくなる。
もっときらびやかに着飾っている人もいるけど、そういうことはどうでもよくなるくらいの圧倒的な華と品格。
そういう演奏をする人は意外と表に出てこないから、レッスンの場とはいえ先生の演奏を少しでも聴けるのは本当に贅沢で。
レッスンでも学ぶことが多くて、いつも濃い時間を過ごして、帰り道に自分に落とし込む作業も凄く楽しくて。
好きな演奏をする人に習えるって本当に贅沢なことなんだろうなって思います。

もし「蜜蜂と遠雷」に出てくる登場人物たちがこの世に存在して演奏を聴くことが出来たら、私は誰の演奏に一番心が動かされるのだろう。
意外と塵は拒否反応出るかもしれないな。
マサルかな。亜夜は感情移入しすぎそう。明石は結構好きかも。

終わりに

散々酷評しましたが、本編は嫌いじゃないからこそ、突っ込む余裕があるからこその感想となりました。
もし文庫版が出るなら沢山加筆や短編追加したのが発売されることを望みます。
そうしたら買って、ちゃんと読みますから。
幻冬舎さん、お待ちしています!


蜜蜂と遠雷」の感想はこちらから
hirobook.hatenablog.jp
※今回の感想以上に長文です。

おまけに本編感想時と同様、私の演奏動画を載せておきます。
今回はクラシックです。

【品川ピアノ】ベートーヴェンのソナタ悲愴2楽章弾いてみた【ラグビーワールドカップ応援】
悲愴2にしては速いと思います。久々に弾いて4日目で人前に持っていったある意味チャレンジャー。
元々大好きな曲で、ラグビー日本代表の福岡選手がお気に入りときたら弾かずにはいられなかった。
今回人前で初めて弾いて、凄くいい曲だと改めて思いました。
もっとブラッシュアップして、沢山の場所で弾きます。

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*1:蜜蜂と遠雷」関連ではショパンスケルツォ3番がお供になるのが私の定番となりました。

*2:2019年10月5日~19日の設置でした。