ひろが語ると長くなる

本の感想書くために作ったはずのブログなのに割とながーく独り言呟いています。ストピや演奏の解説も当ブログで行ってます。

広告

【感想】こんなにも優しい、世界の終わり方/市川拓司

広告

いま、会いにゆきます」等多数のベストセラーを出している市川拓司さんの小説です。
友達が紹介していた本で、買ってから随分放置してて…やっとこさ読みました。
明日の蠍座新月に向けて良いタイミングで読むことができました。
ネタバレもありますので、これから読む方は読まないでね。

↓もくじ↓

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

こんなにも優しい、世界の終わりかた [ 市川 拓司 ]
価格:858円(税込、送料無料) (2020/11/14時点)


世界が終わる前に、会いたい

どうやら世界は本当に終わりを迎えるらしい—。
突然、世界が鉛色の厚い雲に覆われた。空から青い光が注がれた町は、人も獣も鳥も木も、なにもかもが動きを止めてしまう。ぼくは、離れ離れになってしまった雪乃に会うため、危険な旅に出る。十年前、鉄塔の下で出会った彼女と初めて見た夕焼けを思い出しながら……。
(裏表紙より引用)

本編も裏表紙の最初の「どうやら世界は本当に終わりを迎えるらしい。」から始まる。
ある日突然この世が終わりを迎えることとなってしまった。
でも、どこかの期日で一斉に世界が滅びるのではなく、青い光が注がれた町が動きを止めていくのでいつどこがどうなるかは予測が不可能。

主人公の吉沢優(以下優)も、長年想ってる白河雪乃(以下雪乃)に会いにいくことに決めた。
止まってしまっている町が増える中、出会う人たちとの気持ちを受け止めて。
その旅の道中や過去の回想シーンがメインで物語は進んでいく。
今まで素直になれなかったけどもう後悔したくない、という想いを胸に。
人が最後に、最期に思うのは「後悔したくない」ということ。
中でも、「大切な人と会いたい・いたい」「気持ちを伝えたい」と思うことが多いのだろうな。

愛に満ちた優しい世界

優は旅の途中で出会う人たちの優しさや愛情に支えられ、進んでいく。
周りと上手くやれないことも多くて苦労してきた優が、

世界はすごく優しくなったよ。もうすぐ世界は終わっちゃうかもしれないけどさ、それでもいじわるなままで終わるよりはよっぽどいいよね?
(104頁)

と思うくらい、優が出会った人はそれぞれの大切な人や場所に対する愛情に満ちていた。
生きているとどうしても自分の想いや身内への感謝の気持ちを後回しにしがちである。
でももう世界が終わるなら、自分が一番したい欲求に素直になる。
愛を思い出すことができる。
人間が真に求めているのは愛なのだろうなと実感させられるし、本当は誰もが愛の存在なんだなぁと思う。
歪んでしまっているのは一体何のせいなんだろう。

印象に残ったセリフ

優や優の周りの人の発言、そうだなぁと思うものが結構あって、自分用のメモも兼ねて紹介します。
ほんとはいっぱいあるけど、頑張って選びました。
(手元にあった栞の枚数にすると決めてたので雪乃のセリフが選べなかった…。)

瑞木さん

途中まで優と一緒に旅をする瑞木さんのセリフでは

嘘の中にある真実を見抜けるようになると、コレは本当ですよって言われていることのいかに多くが嘘っぱちであるかってことにも気付けるようになるんだな。
(92頁)

人間はつい真実を追い求めたくなるけども、真実を追い求めてもわからないことも沢山だから、自分なりの答えを持つことも大切だと思う。
勿論自分の答えをぶつけ合っていいってことではないけども、色んな視点で見てみるのは大事だと思う。

洋幸

絵画教室の友人だった洋幸のセリフだと

世の中には人を傷つける言葉が多すぎるよ。そんなのなくしちゃえばいいんだ
(104頁)

人間は言葉を使って伝えることが多いけども、言葉で傷つくことも沢山。
でも言葉で救われることも沢山。
洋幸の言うとおり、傷つける言葉なんて無くなればいいのにね。

拓郎

優の父拓郎のセリフからは2つ。

わたしはたんに、自分はあらゆる時代を同時に生きているのだと思っている。ひとの脳には、もともとそういう機能が備わっているんだよ。わたしたちの心は時を旅する。光よりも速くね
(中略)
心はものじゃない。だから自由なんだ。
(192頁)

わたしはね、こんなふうに思うんだよ。この宇宙のどこかには、我々が過ごしてきた日々がそっくり残されていて、強く願いさえすればふたたびそこを訪れることができるんだとね……
(513頁)

なんか私と拓郎は話が合いそうな感じがする。
物質的な豊かさじゃなくて、心の豊かさを大事にしている拓郎らしい発言ですね。
(でも物質的な豊かさが悪いわけじゃなく、お金を稼いだり消費することでも世の中への貢献になるのでバランスが大事)
妻を思う描写や、雪乃宛の手紙もとても良かったです。
(是非本編読んで泣いてください!)
拓郎が父だから、優は優しく育ったのだろうなぁ。

そして優のセリフから

好きなひとのためなら、ぼくらはいくらだって強くなれる。嬉しくて仕方ないんだよ。ぼくらは、こうやって大好きなひとのためになにかをしてあげることで、それ以上のなにかを受け取っているんだ。だとしたら底なしのパワーだよね。愛の力学で動くエンジンがあったら、きっとすごいだろうな
(494頁)

拓郎の息子の優らしい、優しいセリフです。
愛の力学が働けば良いエネルギーだろうし、大切な人、仲間と愛のエネルギーが動かせたら、見える世界ってかなり変わるのだと思う。
でも今が優しくない世界かというと、そうでもなくて、優しい世界も近くに存在して。
だから、優しい世界で生きることの選択をしていけたらなと思う。

コロナ禍の今だからこそ思うこと

この作品は世界中でいつどうなるかわからないとても切羽詰まっているけど、
戦争や天災などある日突然自由が効かなくなるものとは違って猶予がある状況。
コロナ禍の今も、ここまでいかずとも似たようなもの。
非常事態宣言の時の、誰とも会えない、人との距離が遠くなってしまった時のことを思い出した。
「私の本当に大切なものは何だろう」「ちゃんと大切な人に想いを伝えなきゃ」
「会える時間を大切にしよう」
そう見つめ直したはずなのに、やっぱりなおざりになってきている。

皆さんには大切な人いますか?
今一緒にいる人は本当に大切な人ですか?
惰性や欲で付き合っていたりしませんか?
一方的に無理強いしていませんか?我慢していませんか?
本当に大切な人に想いをきちんと伝えていますか?

私も明日の蠍座新月を有効に活用して、改めて自分の進みたい道を見つめ直してみようと思います。
蠍座冥王星が守護制なだけあって、生まれ変わるくらいの気持ちでスタートするのに向いているようです)

心が温かくなる作品でした。
今このタイミングで、出会えて良かったな。
私も私の道で、頑張る。