ひろが語ると長くなる

本の感想書くために作ったはずのブログなのに割とながーく独り言呟いています。ストピや演奏の解説も当ブログで行ってます。

広告

【感想】鎌倉うずまき案内所/青山美智子

以前読んだ「木曜日にはココアを」と同じ青山美智子さんの作品「鎌倉うずまき案内所」を読みました。
hirobook.hatenablog.jp

6つの短編からなる今作は、時間がくるくると逆戻りするように平成の終わりから最初まで戻っていきます。
それぞれの作品で色んな人が交錯していくけど、黒祖ロイドというSF作家が中心軸に。
それぞれの主人公に対して黒祖ロイドが少しずつ関わっていくので、黒祖ロイドがどこでどんな形で生まれたのかなぁと見ていくのだけど、意外なところで意外な形で誕生してたの。
本人の努力もあるけど、人の縁で生まれたんだなぁって。

フィクションだけど、その年代に実際起きた出来事とはリンクしているので登場人物たちがどこかに存在してるみたい。
巻末の平成史特別年表は現実に起きた出来事と作中の出来事が両方載っているのだけど、後から読み返すと「あ、あの人の過去がこうなのね。この年が分岐点だったのね」とわかるから面白い。
木曜日にはココアをでも思ったけど、人の人生って色んな人が意外な形で関わっている。
その表現方法が青山さんは上手だし、「そうなのー!良かったね!!」と言いたくなる展開で、優しい世界で好き。

ちなみに、ゆづファンの私としては、2作目の「二〇一三年 つむじの巻」にて

二月からソチオリンピックが始まるということもあって、うまく乗せられた。美しい液晶で羽生結弦くんの勇姿を見たいという想いで決めてしまった
(67頁より引用)

とゆづの名前が出てきてテンション上がったの。
当然ながら巻末の年表にもゆづの名前が出てくる。
平成に2回も金メダル取って、本人も平成生まれたし平成の顔の1人だよね。
フィギュアに全然関係のない作品で名前が出てくると嬉しいし、ファンとして凄く誇らしい。

黒祖ロイドの他に6作の共通点は、それぞれの作品の主人公が自分の人生からはぐれる(自分の人生を見失う)タイミングで「鎌倉うずまき案内所」に迷い込んでしまうところ。
内巻さん、外巻さん、そして所長とのやりとりを経て、帰り際にうずまきキャンディを1つ受け取って元の世界へ戻っていく。
一見うずまきキャンディは過去へ戻ってやり直す、神頼み的にうずまきのパワーを借りるという意味合いがあるように見えるけど、
実はそのキャンディを舐めるとやる気のエネルギーが戻るとか、その人本来のエネルギーに戻る、そういう意味なんだろうなと黒祖ロイドが生まれた瞬間を見て感じた。
うずまきがエネルギーってのはカタカムナで見たけど、カタカムナは時間の流れが未来から過去へなので、多分青山さんもわかってらっしゃるのだろうなと思う。

印象に残った言葉は人魚さんの台詞。

人生ってまっすぐな道を歩いていくんじゃなくて、螺旋階段を昇っていくようなものなんだなって。お互いの曲線がそっと近づいたり重なったりするときに人は出会うものだし、ぐるぐる回りながらあるところでまた同じような景色を見たりもするのね。もしかしたら、世界全体が螺旋なのかもしれない。歴史は繰り返されるって、きっとそういうことよ
(中略)
何かを残すためじゃなくて、この一瞬一瞬を生きるために、私たちは生まれてきたんだよ。生きるために生きるんだよ
(376〜377頁)

事実は小説より奇なりという言葉があるけど、SF以上に奇なことも多いよね。
大変なことも多いけど、その場その場で自分をきちんと生きて、その時出会った人との時間を大切にして過ごすことが人生を良くしていくことなのだと思う。
この世は自分の内側の反映で、サインに気づいて直して、自分で直せるところを直して、自分の人生をきちんと歩むことが大切だと常々思う。

この作品でも自分と大切な人にきちんと向き合うことで転機を乗り越えられるのが凄く良くわかるので、私もきちんと実践したい。
人との縁は尊く、人と接しないと学べないことがこの世には沢山あるから。
出会ったということはどんな出会いであれ自分だから縁が生まれたのだと本当に思います。

この作品は結果的にゆっくり読み進めることとなって、お気に入りのお店で過ごす時間のお供となりました。
黒祖ロイドにとってのメルティング・ポットのような大切なお店でも。
木曜日にはココアをでもマーブルカフェが主軸だったし、青山さんはサードプレイス的な自宅以外のお気に入りの場所を大切にしている人なのかも。
私も大切なお店や人といつまでも共存・共栄していけたらいいな。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

鎌倉うずまき案内所 (宝島社文庫) [ 青山 美智子 ]
価格:825円(税込、送料無料) (2021/9/14時点)


【感想】ときどき旅に出るカフェ/近藤史恵

謎解きはシェフにおまかせください!シリーズの2作を読んで以来の近藤史恵さんの作品。
瑛子が近所で見つけたカフェ・ルーズは以前同僚だった円が営むお店。

旅先で見つけたものを再現し、出しているという。
(裏表紙より引用)

ということで、10作の連作短編集からなる今作は様々な国の美味しそうな食べ物飲み物が出てくるの。
なかなかあちらこちらへ行けない昨今、こういう作品で世界の食べ物を知るのは凄く楽しい。
今は便利な時代だからすぐ写真も見つけられるので眺めながら読むこともできる。
でも食べたくなっちゃうのだけど🤣
表紙は最初の話の苺のスープだよね。美味しそう!

食べられるって幸せなこと。
それがお気に入りのお店だったり好きな人の料理ならもっと幸せ。
最近食が細くなった私は食べることは栄養を摂るために近いけど、それでも心も満たされる食事ができた時は嬉しい。

コージーミステリ作品ということもあり、ただおいしい食べものが出てきて幸せになるお話ではなく、同時に人間ドラマも沢山見えてきます。
人間、誰しもが悩みや秘密を抱えているのだとは思うけど、この作品ではふんわり優しい悩みだけでなく、凄く重い悩みも出てきます。
仕事関連など身近な題材もあるので、コージーミステリーの中では割と重いなぁと思う作品も多くて。

人に助けられることも、困らせられることもある。

悩み事は家族やパートナーなど近しい人に相談するのが一番良いとはいえ、そうもいかないときもある。
だからこそお気に入りのお店の存在や、何でも話せる人のお陰で救われることも多いよなぁとも実感します。
そういう大切な場や人は守らないとね。
今月親しくしている女性とそういう話になり、私には何ができるかなとずっと考えています。

ラストが意外な感じで驚いたけど、円が幸せそうに生きていて何より。

出てくる食べ物はざっと書いても、苺のスープ、ツップクーヘン、中華菓子(月餅、ホウリンス等)、ドボシュトルタ、セラドゥーラ、ユンヨンチャー、ザッハトルテ、スペキュロス、バクラヴァ、リオレと様々な国のものが出てきて楽しいです。
私も久々にホウリンスを食べたくなって、買っちゃいました。
その時の感想は下記記事へ。
hirocafe.hateblo.jp


[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

ときどき旅に出るカフェ (双葉文庫) [ 近藤史恵 ]
価格:693円(税込、送料無料) (2021/8/22時点)