ひろが語ると長くなる

本の感想書くために作ったはずのブログなのに割とながーく独り言呟いています。ストピや演奏の解説も当ブログで行ってます。

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こまどりたちが歌うなら/寺地はるな著【感想】

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※内容にも触れるので、これから読む方はご注意願います。

3月26日に発売された寺地はるなさんの新作です。
特設サイトもあり、和菓子のイラストも色々見られてとっても可愛い♪
lp.shueisha.co.jp
可愛くて美味しそうな表紙の印象と違い、和菓子の知識が増えるというよりは主人公茉子の成長物語と人の関わり、働く環境が中心の本でした。
それでも和菓子やこまどりの要素がいいアクセントだし、食というのは私たちの三大欲求の一つであり、生きることに繋がること。
人間らしさみたいなのも見えてくる作品です。
寺地さんらしい作風で最初は「茉子大丈夫かな?」と不安を感じ、春なのになんでこんなに不穏なの!と思ったりもするのだけど、茉子の成長で周りも変化していく様子が良かったし、気づいたら皆のこと凄く応援してた。

茉子は勤めていた会社を辞めた後、親戚の伸吾が社長を務める吉成製菓に転職します。
そこは労基などの法律を無視した仕事の仕方(小さな会社では割とある感じかな)があり、人間関係もちょっと一癖あり。
でもちょっと不器用だけど真っ直ぐな茉子は、昔“こまどりのうた“をもらって元気付けられたように、人々の心に生きる力を与えていく。

茉子はまるでこまどりが鳴く感じのようだと思う。

「伸吾くん知ってる?こまどりってものすごく大きな声で鳴くらしいよ」
(中略)
「黙ってたら、みんな無視するやん。無視していいってことにされてしまうやんか。いないことにしていいってなる。だから、こまどりは鳴くんや。ううん、叫んでるんや。ここにいる、って」(172〜173頁)

なんで寺地さんがこまどりを題材にしたのかがこの辺りのセリフに表れていると思う。
中略後の引用したセリフは茉子の過去の体験からくる言葉だと思うけど、自分のことをちゃんと伝える大切さは茉子の軸になっているんだろうな。
人によっては茉子の真っ直ぐなその言葉がうるさく感じたり辛く感じたりもするけども、茉子の声は人々に変化を促していく。

人は自分の置かれている環境や自分のことは見えにくいけど、他者が気づいてくれたり見ていてくれるお陰で自分を知ることができたり変わっていけるのだと思う。
それぞれ必死に生きているしそれぞれ大変だけど、一人で頑張らなくていい。
そういう大切なことを思い出させてくれる。

働く環境も人が変わらないと変えようがない。
いくら法でそうなっていてもその通りにいかないこともあるし、何なら労働や社保のプロのいる社労士事務所がブラックだなんてネタまであるくらいで。
そんな中茉子は労働環境や人の雇用体系、休業扱いまで影響与えるなんて凄いと思う。
茉子は胃が痛くなったり考えすぎたりするけど、皆が見ぬふりしていたところに入っていく強さもあってその行動力に驚く。

「前例がない場所では、自分が前例になるしかない」(76頁)

今年の春分の日からの1年のホロスコープを読んだ時“国民がしっかり主張していく一年“という風にも感じだけど、まさにこういうことなんだろうな。
それも自分のためじゃなく、あの人という特定のためを越え、それをすることで皆のためになることもわかっている。
だから茉子の真っ直ぐな優しさや強さは周りに伝播して、影響を与えていくんだなぁと思った。
私も自分の言葉でちゃんと伝えることを改めて意識しようと思った。

そういう茉子を見ていると、他のお菓子じゃなくて和菓子が題材にぴったりだよなぁと思う。
和菓子は同じ食材を使っても同じ名前のついたお菓子でもお店によってかなり雰囲気が違ったりするし、季節によっても変化を出せる。
まるで似ていても同じような人は一人もいないというのも、気持ちの移ろう感じも、和菓子だから伝わるのかなと感じたので。

作中に出てくる和菓子はとっても優しくて、私も今年は虎屋さんの金魚の上生菓子を絶対食べよう!なんて思うくらいで。
www.toraya-group.co.jp
昔から気になってたけど、今年は絶対買います!(宣言)

そして帯にも書かれている

涙はしょっぱい、お菓子は甘い。(18頁他)

という言葉も、辛い時は誰かが優しさをそっと添えてくれることが伝わる文言だと思う。
そして

その人が抱えている問題も、それにまつわる感情もぜんぶその人のものだから、なんとかしてあげたいけどもなにもできない場合の方がずっと多い。でも気にかけているよ、ということぐらいは伝えたい。そういう時に、人は食べものを差し出してしまうのかもしれない。(174頁)

というお菓子を目の前にして想う人って大切な人なんだなぁと思うと、気持ちが温かくなった。
作中でも色んな人が色んな人にお菓子をあげて、食を共にして、なんかいいなぁって思った。
作中の登場人物は他人に無関心に見えてちゃんと思い合っているのが段々見えてきて凄く良かったです。
きっと今の世の中もこういう感じなんだなと思うと、やっぱり人間は愛や思いやりの気持ちをちゃんと持っているのだとホッとする。

作中に出てくる和菓子も、さっき触れたように金魚の上生菓子は買うつもりだけど、他にもあれこれ食べたくなってきた。
和菓子のアンシリーズも和菓子がすっごい食べたくなる作品ですが、この『こまどりたちが歌うなら』も和菓子が食べたくなります。
それも誰かと一緒に「美味しいね」って言いながら食べたい。

和菓子の中では個人的には亀田さんの

どこか忘れたけど、名古屋だったかな、バーバパパみたいな月見だんごがあるのよ、ピンクの。(124頁)

が凄く気になったのだけど、調べてみると確かにバーバパパですね。笑
www.kasyuan.jp
折角占星術も活用しているので、今年は月見団子も色々探して買ってみようと思いました。

和菓子のことも勉強になりつつ、前を向く力をもらえる本です。
新年度環境が変わって疲れていたり季節の変わり目で体にきている方は、まずはご自身をしっかり労ってからこの『こまどりたちが歌うなら』を読みながら美味しい和菓子でも食べてあなた本来の力をとりもどしてくださいね。

おまけに、私が好きな和菓子屋さんの記事を載せますね。
★日本橋長門
hirocafe.hateblo.jp
江戸からある東京の老舗和菓子で、松風や久寿もちや切りようかんも有名ですが、上生菓子もとても美味しいです!
お店目の前がさくら通りなので、桜の時期は綺麗ですよ♪

★鶴屋吉信TOKYO MISE
hirocafe.hateblo.jp
hirocafe.hateblo.jp
菓遊茶屋という目の前で上生菓子を作ってくれて食べられるスペースもあるお店です。
売っている和菓子も美味しいですし、添加物は最小限です。

★銀座甘楽
hirocafe.hateblo.jp
豆大福も大好きですが、紅白道明寺も美味しかったです!
長命寺タイプの桜餅もあり、かぼちゃ饅頭や若鮎など季節の和菓子も定期的に入れ替わります。

★本と一緒に写っている雑貨:近沢レース店と食品サンプルココナッツ
hirobook.hatenablog.jp
羊羹は鶴屋吉信「花つどい」、マーロウ「三浦かぼちゃの羊羹」、こだわりや「こしようかん」

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