ひろが語ると長くなる

本の感想書くために作ったはずのブログなのに割とながーく独り言呟いています。ストピや演奏の解説も当ブログで行ってます。

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今日のハチミツ、あしたの私/寺地はるな著【感想】

久々に小説の感想を書きます。
寺地はるなさんの『今日のハチミツ、あしたの私』を読みました。

ほっこり系の小説なのかと思いきや、主人公塚原碧は大きく環境も人間関係も変わる体験をしながら、人や養蜂などの仕事を通じて成長していきます。
〜☆〜☆〜☆〜☆
どこにでもいそうな女性のように描かれる碧だけど、優しさや賢さに行動力まであって、しっかりヒロイン。
若い時に自分を導いてくれた人との思い出で、自分の人生を取り戻して、今を生きている。
読んでいるといつの間にか碧のことを応援していたり、食について想いを巡らせている自分に気づく。
私も大切なものを思い出せた作品の1つ。

この作品の軸は『居場所』と『食』だと思う。
どちらも生きていく上で必要不可欠なもの。
自分の軸となるもの。

宮下奈都さんの巻末解説に

これは、居場所の話だと思う。居場所を見つけるのではなく、やわらかく開く感じ。もともとなかった場所に、そっと立ってみる感じ。そして、そこから歩き出すのだ。居場所を求めるだけでなく、自らつくっていく。
(中略)
物理的な場所だけでなく、人と人との関係が居場所になりえるのだと思う。
(248頁)

と書いてあるように、碧が生きるためだったり誰かのためにした行動で、周りの人も変わっていき、いつの間にか碧にとって大切な居場所が出来ていくお話。

付き合っていた男性安西が碧に結婚を申し込み、ついていくことにしてから物語が大きく動きます。
着いて行ったのに、なんと結婚が認められない。
安西の父に黒江という養蜂家から金を回収しろと言われ、黒江に会いに行くことでまた物語が大きく動きます。

碧は中学生の時に河川敷であさのはちみつを貰い、生きることができた。

栄養が足りてないのよ、あなた。そう言ったあの女の人。口調はきついのに、すこしも嫌な感じがしなかった。あの人のように、食べることは大事なことだと人に伝えられたら。そう思った時、まっすぐにのびる一本の道が見えた気がした。
(30〜31頁)

碧の中に通った道。
あの日のはちみつのお陰で碧は生きることを選んだ。
碧が生きてくれているお陰で助かった人たち、救われた人たちが沢山いる。

碧には家には居場所がなかった。
でも真百合という友達がいる。
安西もいる。
元々居場所はあるのだ。
でも、見知らぬ土地でもちゃんと居場所を作っていく。
碧は周りを見て判断できる。
育ってきた環境で身についたものだけど、判断に優しさを加えられるところが碧にはある。
押し付けがましくない優しさ。
だから周りの人も碧のために力になりたいと、手を差し述べてくれる。
皆も変わっていく。

「運が良かったんじゃないよ。その人たちと会えたのは偶然かもしれないけど、会えただけで終わらせなかったのは、それは碧が、」
碧が、と言ってから、すこし考えるような表情をする。
「碧が、行動したからだよ。碧の良いところがその人たちに伝わったからだよ。全部、あんたが自分の手で勝ち取ったもんだよ。」
(196〜197頁)

という真百合のセリフのように、碧はちゃんと行動している。
行動できない、言えないシーンも出てくるけど、ちゃんと碧は行動できる人。
だから居場所が作られたんだよね。作られたというよりは、作ったんだよね。
それが自分でできることをやりつつも他人のためになるようなことをやれてしまう碧の優しさと強さからきていると思う。

作るといえば食事も。
碧が作ったり、あざみさんが作ったりと色んな人の食事が出てくるが、食のシーンも結構印象的なシーンが多い。

「食べるものが身体をつく流のはあたりまえだけど、それだけじゃなくて。誰かと一緒にごはん食べて楽しかったとかおいしかったとか、そういう記憶ってずっと残るから、食べてもなくならないよ。記憶が残るなら、それはごはんも残っているってことだよ」
(150〜151頁)

この部分、宮下奈都さんも解説で引用している箇所なのですが、碧があさのはちみつを貰ったことから得た大切なことの1つ。
碧の軸の1つでもあると思う。

食事って、『誰と何を食べるか』がとても大切だと私は思っている。
何を食べるかは今の世の中比較的選択しやすくなった。
拘った食材も、高級店も、お手頃なお店も、オシャレなところも、落ち着くところも、味に特徴があるところも、それぞれに個性を発揮して、それを見つけやすくなった。

でも『誰と』というのは凄く難しい。
どんなに良いものでも、好きなものでも、それを誰と食べるかで感じる味は変わってしまう。
大切な人と食べるもの、大切な人が作ったものを食べること、これは大切な思い出としてつみ重なっていき、自分の中の生きる活力となる。
碧は食の大切さに若い時に気づけたところが、碧の賢さの1つだとも思う。

居場所も食も作るもの。
大切な人と共有するもの。
だから自分の軸となる。
自分の軸は自分で作る。
軸ができると自分のできることで他人を幸せにすることもできる。

勿論生きていけば変化はある。

「あんなに自然の少ないところで、って最初はびっくりしたけど、やっぱり蜜蜂はすごい。その場所で、ちゃんと生きていく。……人間も同じだと思った。俺たちは、生きなきゃならない。そして、生きている限り、環境は変化していく」
だから、順応していくしかないなと思ったんだよ、と言った黒江の目元がふっとゆるむ。
(245頁)

変化していくのだから、居場所も食に求めるものも変わっていって当たり前。
その変化を楽しめたら人生はもっと楽しくなると思う。

因みに、表紙のパンケーキのイラストは優しいけど、パンケーキが出るシーンには碧の芯の強さが感じられるんですよ。
ふわふわで甘くたって、芯を強くすることもできるんですね。
むしろふわふわで甘く優しいからこそ芯が強いのかな。

碧を通じて日々の幸せの尊さを改めて感じたり、自分が大切な人のために出来る事というのは決して大きな何かをすることだけではないんだろうなって思い出せたり、寺地さんのお陰でまた1つ大切なものを思い出せすことができた。

読書のお供はみつばちのーとさんの陽だまりハニーキャンディ

そして、タリーズのハニーヨーグルト。

はちみつにハマりつつある今日この頃。
はちみつや寺地さんのこの本のお陰で、私の生き方もまた変わっていきそう。
素敵な本に良いタイミングで出会えて良かった。

hirocafe.hateblo.jp

ゆづのスケートを見てから3年経ちました

今日は舵社から「羽生結弦ダイアリー2022-2023」が発売となりました。
昨年は手帳が出るだなんて思いもしなくて、予約も殺到してネットはなかなか購入できなかったので本屋さんに取り置きお願いしたのを覚えています。
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昨日発売となった舵社の写真集と一緒に。今年のは左側の天地さんカラーです。
まさか今年も発売すると思わず、驚きました。
企画してくださる舵社さん、本当にありがとうございます。
今回も田中宣明さんの素晴らしいお写真が沢山で嬉しいです。
今シーズンだけでなく、過去のものも入っていますね。
今回もカバーを外した部分や、シンプルなカバーの裏側の写真もいいので、裏表紙側はカバーを外した状態で使います。

今日はゆづのスケートを見てから丸3年の日です。
埼玉スーパーアリーナでのエキシビションが2019年の3月24日だったからです。
奇しくも昨年も今年も発売日が3月24日なので、絶対思い出すようにできています。笑
昨年も手帳の発売に合わせて記事書いてますね。
hirobook.hatenablog.jp
チケットも面白いような流れで取れ、前の方で見切れでもなく良席を取れたと思います。
見られる時は、流れが整っていくのもこの頃から実感していました。

観た演技は「春よ、来い」
ここ4シーズンエキシで一番滑っていること、そして今年のオリンピックでのエキシでも滑ったので、最近のゆづの演技だと印象に残っている方も多いのではないでしょうか。
オリンピックで演技後こちらの演奏動画の閲覧数が伸びました。
ご覧いただいた皆様本当にありがとうございました。
youtu.be

私が観た3年前はとても儚く、本当に桜が舞ったり散ったりしているようでした。
それが3年後のオリンピックのエキシビションでは明るい未来をはっきりと感じさせるものに。
ここ3年もゆづは色々あって大変だったと思いますが、それでも彼の観ている未来がとても明るいもので良かったと心から感じる演技でした。
ゆづだけでなく私の観ている先も同じように変わっていきましたね。
今は私も明るい未来を沢山感じ取ることができるようになり、日々の幸せを実感しながら、今世の自分を生きる喜びを味わっています。

ここ3年でゆづ曲は21曲弾くことができました。
youtube.com
4月か5月にもう1曲増えそうな予感です。
とはいえ今はレッスンの曲を最優先でピアノを弾いているので、気長にお待ちいただければ幸いです。
ピアノに対する向き合い方も、表現力の追求も、ゆづがいなかったら全然違ったものだったと思うので、ゆづには感謝しかないです。
今はもう軸が自分にしっかりとあるので必ずしもゆづから何かを学び取ろうと必死になることは無くなりましたが、それでも彼のスケートを観ていると感じ取れることや学べることは沢山だなと思います。
そしてゆづのお陰で仲良くなれた、ネット上の友人もいます。
彼女と今年出会えたのは自分が変われたからですが、ゆづが今日までスケートを続けてきてくれたことが大きいと思います。
4年前で引退していたらこの出会いはなかったからですからね。
ゆづ本当にありがとう。
生まれてきてくれて、スケートを続けてきてくれて、本当にありがとう。
足お大事にしてくださいね。

来月は日本橋高島屋からゆづ展が始まる予定ですね。
観に行きたいな。渋谷のゆづ展のように予約取れますように。